添乗員として10年間働いてきた中で、一番多く訪れたのがイタリアでした。
イタリアは、ローマだけでなく、フィレンツェ・ヴェネツィア・ミラノなど、複数の都市に人気があり、周遊型ツアーが中心。個人ではまわりづらいからこそ、団体旅行にぴったりな国なんです。
そんなイタリアでの添乗は、楽しい反面、毎回ドキドキの連続でした。
天才なのにゆるい?イタリア人気質
ある現地ガイドさんが話してくれたのが、「イタリア人は天才だけど、仕事はそこそこでいい」という話。
たとえば私が衝撃を受けたのが、高速道路の料金システム。
ある日、イタリアでツアーバスに乗っていた時のこと。料金所で「ピッ」と音が鳴り、そのままスムーズに通過。しかも運転手は何もせず、そのまま走り去っていきました。
「え?今のなに??」と驚いて聞いてみると“テレパスシステム”というもので、料金は後日、自動的に請求される仕組みだと教えてくれました。
今でこそ日本ではETCが当たり前ですが、その当時(私が添乗していた頃)、日本ではまだ普及しておらず、料金所の渋滞は日常茶飯事。
私は「日本は技術先進国でこういうシステムは得意なはずなのに、イタリアのほうが先にやってるなんて!」と、ものすごく驚きました。
発明や技術では世界の最先端をいっているのに、それを完璧に使いこなすことにはあまりこだわらない。それがまたイタリアらしさでもあります。
ちなみに、ヴァチカンの2000年イベント準備も「イタリア人だと終わらないから」と、わざわざドイツの会社に依頼したという裏話もあるそうです(現地ガイド談です!)。
郵便物が届かないワケ
イタリアの郵便事情もびっくり。ある郵便局では、集荷スタッフが持ち帰った郵便物をテーブルにドサッと置いてそのまま帰宅。残業して仕分け…なんてことはしません。
翌日になると、昨日仕分けできなかった郵便物の上に、また新しい郵便物がドサッ…。
当然、古い郵便物はどんどん下に埋もれていきます(笑)
だから、「イタリアでは郵便が届かない」は、こういう文化から来ているんですね。
添乗員、朝から全力フル回転
添乗員の仕事は、毎日がトラブル対応の連続。時差の関係で本社にも相談できず、現場で瞬時に判断する力が求められます。
ある朝、出発前にスーツケースが届かない事件が発生。どうやらポーターが寝坊したらしく、荷物が集まってこない…。
時間が押すとその後のスケジュールがすべて崩れてしまいます。
私はバスに乗っていたお客様に「もし元気な方がいらっしゃったら、荷物運びをお手伝いいただけませんか?」とお願いしました。一か八かでしたが、数名のお客様が快く手伝ってくださり、大きな遅れもなく出発できました。本当にありがたかったです。
何年も前のことなので記憶は曖昧ですが、たしかその時はポーター代を返金し、皆さまに1杯ずつドリンクサービスをしたような気がします。ちょっとしたことではありますが、感謝の気持ちを形にできてよかったなと思っています。
トラブルも、旅の思い出に
イタリアの添乗はいつもハラハラ。でもそれ以上に、街の美しさや人の陽気さに元気をもらえる国です。
海外旅行では、「自分に非はないけれど巻き込まれるトラブル」もあるかもしれません。でも、そんな時は「これも旅の思い出!」と笑いに変えて、日本の良さを再発見するきっかけにしてみてくださいね。
おわりに
イタリア添乗は、私にとって「大変だけど最高に楽しい仕事」でした。
これから旅をする皆さんも、思わぬハプニングを前向きに楽しめますように!




