私のいちばん好きな言葉――
「しあわせは、いつもじぶんのこころがきめる」
昔、企業のインセンティブ旅行の添乗でモナコを訪れたときのこと。
現地からはさまざまなオプショナルツアーが用意されていましたが、私は「ミラノ日帰りツアー」を担当することになりました。
ご存じの通り、モナコからミラノまではかなりの距離があります。
高速道路をバスで移動すると、日本で例えるなら東京から名古屋まで往復するようなもの。
朝に出発して、観光して、その日のうちに戻る――そう頻繁にすることではありませんよね。
当日のスケジュールはおおよそですが、
朝8時頃出発 → お昼にミラノ到着 → 午後3時頃に出発 → 夕方7時頃にモナコ帰着予定。多分、もっとハードスケジュール。
移動に片道約4時間、現地滞在はわずか3時間という強行プランです。
しかも、ガイドが案内するのはミラノ市内の3時間のみ。
移動中のバス4時間×往復は、添乗員である私が担当。
これまでに聞いてきたイタリアの小話や歴史、豆知識を駆使し、道中ずっとお話し続けました。
観光を終えてモナコへ戻る帰り道。
「滞在時間が短かった」「バス移動が長すぎた」というお声もありました。
おっしゃる通りです。時間配分だけを見ると、満足しにくい行程だったかもしれません。
でも、私はこうお話ししました。
「日本で言えば、東京から名古屋まで日帰りするようなもの。
でも今日、ミラノのドゥオモを目の前で見て、カツレツを味わい、お買い物もできましたよね?
きっと心に残る1日だったと思います。
次は、イタリアだけの旅にゆっくり行きましょう!」
日本に帰ってから、その日をどう振り返るかは人それぞれ。
たとえば――
1. 「せっかくのミラノだったのに、バス移動ばかりで残念だった」
2. 「モナコから日帰りでイタリアへ行って、ドゥオモを見て、本場の料理を食べてきた!次はもっとゆっくり回りたいな」
かかった時間もお金も同じ。でも、どちらの思い出の方が幸せでしょうか?
私はいつも、2番のような気持ちを大切にしながら過ごしています。
たとえ思い通りにいかないことがあっても、
その中に「よかったこと」「楽しかったこと」を探すようにしています。
旅行中は、天候や交通事情、思わぬトラブルに見舞われることもあります。
けれど、自分の力ではどうにもならないことなら、潔く受け入れて、
その中で心が救われるような「2番の視点」を見つけていきたいのです。
たとえそれが負け惜しみだと思われたとしても、
誰にも迷惑はかけていませんし、自分の心を前向きに保てるなら、それで十分。
小さな選択の積み重ねが、
“幸せを感じられる心”を育ててくれると、私は信じています。